長年『梅多』としてお客様にご愛顧頂き育て頂いた、この『御料理 梅田』においては、お店自体の今後のさらなる成長、発展と同時に、設えも料理人とお客様の小さな歴史が刻まれ深みを増し共に育っていく、そんなお店を目指しました。
使い込む程に風合いが増す錫の床タイルや革張りのカウンターなど、今後何十年も様々な物語が刷り込まれ、多くの人にとって特別な場所となることを願い作りました。
今回店を構えるにあたり、インテリアデザイナーの橋本亮介氏(オジデザインワークス株式会社)にデザインを依頼しました。
話し合いの中で、料理をおいしく味わって頂くために基本はしっかり押さえた上で、先入観にとらわれず様々な素材使いや空間構成をし、横浜だからできることを模索しました。
まず、今回の店全体の雰囲気の中で最も存在感が強いものは床材です。
横浜という港町は海外の文化が早くから取り入れられ、異国情緒あふれる町並みの中にはタイルが自然に、美しくとけ込んでいます。
和食を振る舞う店でありながらも、そういう町並みで育ってきた人たちが通う店として、意匠の中にタイルを取り入れることは自然の話の流れでした。店主の梅田様と話の積み重ねの中で必然的にモザイクタイルを使いたいという話が生まれ、ただヨーロッパのタイルをそのまま取り入れるのではなく、この横浜ならではの何か面白いことをしたいという思いから、タイの職人に依頼しオリジナルで錫のタイルを作ることとなりました。
直線と曲線で構成された錫のオリジナルデザインのタイルは、波紋のように美しい表情で独特な雰囲気を醸し出しています。
店内で必見の特別な個室は、小上がりとなったテーブル席の回りを額のようなミラーが囲み幻想的な空間となっています。
小上がりの空間の周りにはボールチェーンが垂れ下がり、うっすらと空間を仕切り、その外側にはまた錫のタイルの空間に革張りのゆったりとしたソファが置かれ、さらにうち解けた雰囲気で親密な時間を過ごすことができるでしょう。
カウンターは、使い込むほどに味の出る革張りのカウンターにし、今後何十年も様々な物語が刷り込まれ、多くの人にとって特別な場所となることを願い製作しました。
また、テーブル席では、タイの錫タイル、和モザイクタイルが施された柱、イタリアの塗り壁、インドで染めたフリンジカーテン、というように国や素材のイメージにとらわれず、公平な目で『御料理 梅田』ならではの新しい和食が最も美味しく食べられる空間を作りだしています。
斬新に感じる新しい試みを行いながらも、食事が美味しくできる空間として照明などに大変気を配って設計しました。
古き良き文化を大切にし、その傍らで発展を遂げる横浜・馬車道。
そんな街で伝統を受け継ぎ新たな料理を生み出すこと。そして、そこに集う人々に愛され、共に歳を重ねることができる、そんな空間であるように願います。
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